学協会賞等・受賞者の紹介


  • 久保山昇、多田充裕、安孫子宜光(日本大学松戸歯学部)、早川建、境武志、野上杏子、中尾圭佐(日本大学電子線利用研究施設)、佐藤勇(日本大学大学院総合科学研究科)
    平成22年度 日本レーザー医学会総会賞(2010年11月)
    「自由電子レーザー照射による関節炎ラットに対する抗リウマチ作用」


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     関節リウマチ(RA)は,多発性の関節炎を主症状とする疾患で,病態の進行に伴い関節滑膜組織に増殖性炎症が誘導され,増殖した肉芽組織から炎症性サイトカインやMMP-3などの組織破壊性因子が過剰産生して,関節軟骨や骨を侵食・破壊を引き起こす自己免疫疾患である.治療の柱は,疼痛・炎症反応および免疫反応を抑制する薬物療法であるが,様々な重篤な副作用がある.従って,安全性も含めて副作用の少ない効果的な治療法が求められている.近年,自由電子レーザー(FEL)照射により,生体に対して生ずる光化学反応,光熱反応,光衝撃反応を臓器・細胞,DNAの各レベルで制御できる可能性があり,その臨床応用として,コレステロールの分解・除去、硬組織の表面改質,細胞内への色素導入等が報告されている.そこで,本研究ではヒト関節リウマチの動物モデルラット(CIAラット)を用いて, FEL照射による抗リウマチ作用を検討した. FELの照射条件は,波長1,750 nm,照射時間8分および16分としそれぞれ総照射エネルギー密度は2-3,4-6 J/cm2で1週間に6回,2週間 CIAラットの膝関節部位に照射した. FEL 照射8および16分でそれぞれ足蹠の腫脹抑制率は,23.3±3.7 %,31.0±5.8 %を示した.FEL照射は,CIAラットの踵骨および大腿骨の骨糜爛と骨吸収を抑制し,血清中炎症性サイトカインであるIL-1β,IL-6,CRPおよびリウマトイド因子の上昇を有意に抑制した.以上の結果から,FEL 照射は関節リウマチの炎症反応の抑制に有効であることが示唆された.


  • 橋由美子、早川恭史、桑田隆生(日本大学電子線利用研究施設)、寒河江登志朗(日本大学松戸歯学部)、田中俊成、早川建(日本大学電子線利用研究施設)、佐藤勇(日本大学大学院総合科学研究科)
    生体医工学シンポジウム2010 ベストリサーチアワード(2010年9月10日)
    「パラメトリックX線を用いた位相コントラスト法による生体イメージング」


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     パラメトリックX線(PXR)を光源とする位相コントラストイメージング法の開発を行っている。位相コントラスト法は吸収係数が小さい軽元素領域でも高い感度を有するため、生体軟部組織など従来法では観察が困難な物質でも明瞭な画像得られる。位相コントラストを得る方法として回折強調法(DEI)を用いた光学系を作製し、またDEIのデータを用いたCT画像も測定可能にした。PXRを光源とすることによって比較的小規模な施設での位相コントラストイメージングが可能になった。また約φ100mmのビームサイズ、準単色光であるため被爆線量を低減できるなどの特徴を生かすことでPXRが医療応用にも適した光源となり得ることが分かった。


  • 石塚大祐(日本大学大学院理工学研究科博士前期課程電子工学専攻1年)
    IUMRS-ICA 2008奨励賞(2008年12月13日)
    「自由電子レーザ照射による単層カーボンナノチューブのカイラリティ制御」


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     単層カーボンナノチューブは炭素の同素体であるグラフェンを円筒状にさせた物質で、グラフェンの巻き方(カイラリティ)によって電気特性が大きく変わり金属的にも半導体的にもなり、様々な分野への応用が期待されている。しかし、カイラリティを制御する技術は世界でまだ成功していない。その中で著者は、CVD中に自由電子レーザを照射することで制御を行える足がかりを掴むことに成功した。


  • 松山慶一郎(日本大学理工学部電子情報工学科4年)
    平成20年度日本大学理工学部学術講演会優秀発表賞(2008年12月9日)
    「劈開法によるグラフェンの作製」


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     近年、多層グラファイトの層間に金属原子をインタカレートした超伝導が注目されている。しかし、この超伝導は理論上TCは室温を上回ると考えられているが、実際は11Kと非常に低い値しかでていない。その原因として、インタカレートした際のインタカレートの乱れ、またグラファイト構造の欠陥が原因であると考えられている。我々は、多層ではなく、2層グラフェン間に金属原子をインタカレートすることで、乱れを抑制できTCが上昇すると考える。我々は2層グラフェンを用いたモデルを実現するために、まず文献から値の明らかな単層のグラフェンの作製を試みる。


  • 佐藤 勇(日本大学大学院総合科学研究科)
    平成20年度(財)高エネルギー加速器科学研究奨励会 諏訪賞(2008年11月)
    「高エネルギー線形加速器の発展に関する貢献」


    ≪受賞対象業績≫
     東京大学原子核研究所(1966年赴任)での加速器技術開発以来、高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構、1972年赴任)での陽子シンクロトロン建設、放射光実験施設(PF)建設、TRISTAN建設、KEKBプロジエクト、など数多く大型プロジェクトに携わり、その成功に大きく貢献した。さらに日本大学原子力研究所(現日本大学量子科学研究所、1996年赴任)での電子線形加速器を用いた自由電子レーザー発生装置等の開発に成功し、また旧動力炉,核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)の核燃料廃棄物消滅用電子リニアックの研究および要素開発の指導を行ってきた。
     これら長年に渡る日本の高エネルギー加速器の発展への多大な貢献に対し、高エネルギー加速器科学研究会より同賞を授与された。

    (註)諏訪賞は、高エネルギー加速器科学の発展上、長期にわたり顕著な寄与があったと認められる研究者・技術者に贈られる。


  • 松山史彦(日本大学大学院理工学研究科博士前期課程電子工学専攻1年)
    MRS-J奨励賞(2007年12月)
    Measurement of Electrical Conduction of C60 Derivatives Monolayer on Au Film(Au超薄膜上に成膜したC60誘導体単分子膜の電気伝導特性)


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     Little and Ginzburg proposed low dimensional transport systems by excitons as a model of a room temperature superconductivity. We have studied the self-assembly monolayer of the C60-O-C8SH derivatives (C60-SAM) (as dielectric layer) on ultrathin Au films (as conductive layer) as the model materials for an excitonic superconductor. In this study, the electrical conduction properties of C60-SAM/Au//MgO (100) were measured. MgO (100) substrates were annealed at 1100℃ for 12 h in the air. Using the metal mask, electrodes were made by RF magnetron sputtering. When electrodes were made, sputtered Au atoms passed around behind the holes of the mask. The width between two electrodes was less than 20 µm length. After a deposition of Au ultrathin films by RF magnetron sputtering, the substrates were soaked in a 0.01mM benzene solution of C60 derivatives for 20 h at room temperature.


  • 寒河江登志朗、佐藤由紀江、岡田裕之(日本大学松戸歯学部)、早川恭史、田中俊成、早川 建(日本大学量子科学研究所)、佐藤 勇(日本大学大学院総合科学研究科)
    第28回 日本レーザー医学会総会賞(2007年9月)
    「歯の硬組織にFEL(自由電子レーザー)照射したときのレーザー波長依存性とプラズマアブレーション」


    ≪受賞対象研究発表の要旨≫
     歯のエナメル質・象牙質の硬組織に対して、レーザーによりウ蝕除去、窩洞形成、露髄、歯石除去などを行うときは波長2.94µmのEr:YAGレーザーが適していると考えられ、実際に歯科臨床で用いられている。 この波長は、水の吸収波長である3.0µmから実験的に確かめられてきたものである。原理的には、組織中の水分のマイクロエクスプロージョンによって組織が破壊されると考えられている。 しかし、多くの場合、象牙質とエナメル質ではレーザー照射に対する態度が異なることが経験的に知られている。 これはレーザーによる硬組織のアブレーションが水のマイクロエクスプロージョンだけによるものではないことを意味している。 演者らは先に歯のエナメル質と象牙質のアブレーションの至適波長には若干の違いがあることを報告した(レーザー医学会、2004, 2005)。 今回、歯の硬組織のレーザー波長依存性をさらに精査した結果と、FELによる歯の硬組織の効果がプラズマ・アブレーションである可能性について報告する。
     FELは日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設(LEBRA)の100MeV、LINAC−アンジュレータで発生させたものを実験室内の照準照射装置に導いてポイント照射実験に供した。 実験材料は臨床的理由で抜去された歯を用いた。照射後のピット形成は実体顕微鏡観察およびレーザー変位計(キーエンス)で深さ計測を行った。
     ピットの深さはエナメル質と象牙質ではことなり、エナメル質では照射FELの波長が3.2µmのとき最大であったが、象牙質では波長2.8µmで最大となった。 エナメル質と象牙質の境界部分であるエナメル象牙境は、同一波長ならエナメル質あるいは象牙質よりも深いピットを形成した。 形成されたピットおよび周囲を回転対陰極型協力X線源付の微小部X線回折装置で検索した結果、照射してない部分との差異は認められず、新たな結晶の形成も確認できなかった。 これらの結果から、LEBRA-FEL照射によって歯の硬組織の波長依存性とプラズマ・アブレーションが確認できたと考える。


  • 早川恭史(日本大学量子科学研究所)
    平成16年度(財)高エネルギー加速器科学研究奨励会 西川賞(2005年3月)
    「パラメトリックX線発生装置の開発研究」


    ≪受賞対象業績≫
     相対論的荷電粒子と周期ポテンシャルを持つ結晶媒質との相互作用によって発生するパラメトリックX線放射(PXR)現象のX線源実用化の試みを世界で初めて実施した。PXRの特長である連続エネルギー可変性を実現するために2結晶型の装置を開発し、100MeVの電子線形加速器でエネルギー可変単色X線源の生成が可能であることを実証した。

    (註)西川賞は、高エネルギー加速器ならびに加速器利用に関わる実験装置の研究において、独創性に優れ、かつ論文発表され国際的にも評価の高い業績をあげた、原則として50才以下の研究者・技術者に贈られる。