電子線利用研究施設における光源開発

  • PXRによるX線の観測に成功(2004/4/14)
    PXR(パラメトリックX線放射)のビームラインは3月18日に施設検査が行われ、翌日付けで合格しましたので、その後X線取り出し試験を行ってきましたが、4月14日に最初のX線ビームを加速器本体室から隣の大実験室へ取り出すことに成功しました。大実験室で電離箱を用いて観測されたX線強度について、X線強度分布とその取り出し用シリコン結晶モノクロメータの角度に対する依存性を測定した結果、理論的に予想されているPXRの振舞と一致することから、PXRによるX線であることが確認できました。
    下の写真は、大実験室の取り出し窓の直後においてポラロイドフィルムに直付けしたDigital ICを直接撮影したX線透過画像の例で、照射時間は40分です。X線エネルギーは約9.5keVで、準単色のX線による照射のため、くっきりした像が得られています。




  • 波長 2.94µm における FEL パワーモニター波形(2004/3/11)
    波長 2.94µm における FEL 出力モニター波形(紺色の波形)の例です。FELパワーは光ビームライン上に配置したビームスプリッターで一部を取り出し、パワーメーター、赤外光検出器(InSb)、分光器に入射してパワー、波形、高調波のスペクトルを常時モニターしています。
    左縦軸目盛は赤外光検出器の出力電圧、右縦軸目盛はアンジュレーターを通過した電子ビームのマクロパルス電流(ビーム波形は赤色で表示)に対応しています。



  • 波長 2.94µm でマクロパルス出力 15mJ を達成(2004/3/4)
    従来リニアック出口で 100mA、FELラインで 50〜60mA の状態にビームを調整し FEL を発振させていました。電子銃出力電流をこれまでの 200mA から 280mA まで増加させ、FEL ラインで 80mA まで使用電子ビーム電流を増加させて発振実験を行ったところ、電子ビームエネルギー 70MeV、FEL 波長 2.94µm において、同一波長でこの日に行われた利用実験での出力に比べ3倍となる、マクロパルス当たり約 15mJ の出力が得られました。
    また、このとき FEL のマクロパルス幅もこれまでの 1.5 倍となる半値幅 15µs まで広がりましたので、ミクロパルスでは単純計算で2倍に出力が増大したことになります。


  • FEL アンジュレーターのビームダクト変更(2004/1/26)
    従来のアンジュレーター内ビームダクトには、リニアック調整時に電子ビームがダクトに当たり発生する放射線でアンジュレーター磁石が劣化することを避けるため、十分余裕のある外径 27mm、内径 24mm のものを用いていました。これによりアンジュレーター磁石間隙を最小で約 29mm までしか狭くできませんでしたが、間隙を狭くすると FEL 出力が増大する傾向があることから、さらに 5mm 間隙を狭くできるよう 外径 22mm、内径 18mm のものに変更しました。
    また、これにより FEL が発振するアンジュレーター磁石間隙の範囲が広くなり、電子ビームエネルギー固定のままでの FEL 波長可変幅が長波長側に広がりました。


  • 赤外アンジュレーターによる FEL 発振の実績(2003/12/4現在)
    ただし波長は高次光スペクトルの測定から推定、電子エネルギーは偏向電磁石電流値から概算、磁極半値間隙は相対値です。


    測定結果の表は こちら にあります。

    FEL 発振波長は、小幅の変更の場合にはアンジュレーター間隙の調整のみで、また大幅に変更する場合には電子エネルギーの調整も行って、各利用実験毎に必要な波長に調整できます。


  • 3次高調波のスペクトル測定例(2003/12/10)




  • FEL 光の供給体制の整備
    FEL 光を各実験室に誘導する光ビームラインの調整が完了し、実験毎に光ビームラインを切り替えて全ての実験室で利用可能になりました。FEL 光は加速器本体室で平行光線に変換されてから各実験室に送られます。(2003/11/12)