1. “CrystalClear”起動・ログイン
1.1 CrystalClearへのログイン
ディスクトップ上のアイコン“CrystalClear”をクリック。
⇒ ログイン画面が表示。
Login Name“lebra”(Password: なし)で「OK」。
⇒“CrystalClear”が起動し、“Open Sample”画面が表示。
(注)
“lebra”は、不特定多数の利用者向けに登録したログイン名です。
ユーザーの新規登録(個人登録)を希望する場合は、装置管理者にお問い合わせ下さい。
1.2 Projectの設定
ログインすると「Open Sample」画面が表示される。
同画面上で、Projectを設定する(簡単に言えば、これから実施する実験に名前をつける)。
-
Project: 新規実験を行う場合、「New Project」をチェックしProjectに任意の名称を入力。
*Sampleのみを変更する場合(結晶を交換した場合など)は、不要。
-
Sample: 「New Sample」をチェックし、Sample名(任意の名称)を入力。
*上で「New Project」を選択した場合、自動的に「New Sample」がチェック。
-
Screen Collect and Process: 通常の測定及びデータ処理を行う場合に選択。
-
Image Directory: 「d:\lebra(ログイン名)\Project名\Sample名\Images」と表示。
以上で、「OK」。
⇒ Project・Sampleの設定が完了(データフォルダが作製)。
「1.1 Projectの設定」によって、ディスク(D:)「lebra(ログイン名)」フォルダの中に、「Project名」フォルダ、さらに「Sample名」フォルダが
作製される。以降の操作、測定・解析結果は全て、この「Sample名」フォルダに保存されることになる。
最終的な結果の確認、また、新たなデータ処理等は、同フォルダ内のlogファイルや画像ファイルを利用する。
2. “Initialize Instrument”
Project設定後、装置の初期化を促す“CrystalClear”画面が表示される。
「はい(Y)」をクリック。
⇒ 装置の初期化が開始。
初期化が終了後、“Set Up”画面が表示。
*通常、新規Sampleを設定するたびに、「Initialize Instrument」を実行。
任意に初期化が必要な場合はFlow barの「Initialize Instrument」をクリックし実行。
3. “Setup”
データ測定を行う上で必要な情報を入力。
基本的に測定条件のメモ書きだが、「重要なパラメーター」は注意。「他のパラメーター」は未入力でも特に問題ない。
“Main”タブ
測定条件を入力するタブ。
-
Crystal to detector distance (mm): カメラ長を入力。
*カメラ長は回折像の写り具合で変更する (「2次元検出器・カメラ長の設定」参照)。
カメラ長を短くすると分解能は上がるが、低角域(回折画像の中心付近)の回折斑点が重なる可能性ある。
長くすると回折斑点間は離れるが、分解能は下がる。
-
Detector 2θ (゚): 0.00
- Project及びSample: 先に入力したProject名、Sample名であることを確認。
- CystalID: サンプルの識別番号(任意)を入力。
- Tempeature(℃): 測定温度を入力。
“Crystal 1”タブ
測定する結晶に関する情報を入力するタブ。未入力でもデータ測定に影響は無い。
“Crystal 2”タブ
測定する結晶の結晶系に関する情報を入力するタブ。
-
Spacegroup: 「Unknown Spacegroup」を選択する。
(注) 仮に空間群が解っていても、「Unknown Spacegroup」を選択。空間群を入力すると以降の処理が上手く行かないことがある。
未入力でもデータ測定に影響は無い(default値で可)。
“Detector”タブ
測定する結晶に関する情報を入力するタブ。未入力でもデータ測定に影響は無い。
(注)
別の回折装置から移入した画像データ等を使用する場合、取説ver1.3(p.48)の「7.他社の画像データの処理」が必要。
“X-Ray Source”タブ
X線発生装置に関する情報を入力するタブ。
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Element: Copper (Wavelength: 1.5418)
-
Optica/Type: Confocal
- Source Type: Rotating Anode
-
Optica
Focus: 0.3
Slit Size: 0.5
Slit Size: 0.5
“Note”タブ
メモ書き。未入力でもデータ測定に影響は無い。
以上、確認の上、「OK」。
4. “Crystal Evaluation”
ここでは、格子定数を決定するための回折画像の撮影を行う。
4.1 “Mount Crystal”
結晶のセンタリング、φ軸ロックの確認。
*それぞれ確認画面が表示される。
以上、確認の上、「OK」。
4.2 “Initial Images”
回折画像の撮影条件を入力し、撮影を行う。
- Pixel Size: 100(μ)
- Readout Area: Full
-
Screen Schedules: One: 0
*下記の「Screen Schedulesについて」を参照。
-
Width: 振動角を入力。通常は0.5
-
Step: 90
-
Images: 2
*Step、Imagesを上の様に入力することで、以下のパラメーターが下の値に変更される。
・End Angle: 90.5
・Total Images: 2
- Exp Time(min): 露光時間を入力。通常は1 (min)で測定し、回折画像を見て調整。
以上、確認の上、「Run」。
⇒ 「Double-Check Setting」画面が表示される。
Det Dist(カメラ長)及び2θが正しい値であることを確認し、「Start Image Collection」。
⇒ ビームストッパの確認画面が表示される(通常、ビームストッパが取り外されている事は無い)。
確認の上、「OK」。
参考:Screen Schedulesについて
Initial Imagesで測定する画像は最低でも0°と90°の2枚が必要である。
「One: 0」を選択し全パラメーターをdefault値のままInitial Imagesを実行すると、0°の回折画像1枚が撮影される。
しかし、上に示した様にStepに90、Imagesに2と入力することで、「Two: 0, 90」を選択した場合と同様、0°、90°の画像2枚が撮影できる。
この場合、撮影毎のIPの初期化が省略されるため「Two: 0, 90」より短い時間での撮影が可能となる。
この様にStep、Imagesに任意の値を入れる事で、より短時間で複数の回折画像を撮影する事ができる
(例えば、Stepに45、Imagesに3と入力すると、0°、45°、90°の画像3枚が撮影)ため、状況に応じて変更してみる。
もちろん「Two: 0, 90」や「Four: 0, 90, 180, 270 (0°、90°、180°、270°の計4枚) 」を選択し実行しても良い。
ここまでの注意点及び改善点1
Initial Imagesで得られた回折画像を検討し、実験に用いている結晶の質や実験条件を確認できる。
-
回折像の回折斑点が非常に大きいあるいは流れている。= 結晶が壊れている。
→ 結晶を交換する。
-
高角の反射が無い。= 結晶の質が良くない。
→ 結晶を交換する。
-
回折斑点が薄い。= 露光時間が短い。
→ 露光時間を長くする。
-
低角の回折斑点が重なっている。= カメラ長が短い。
→ カメラ長を長くする。
-
回折斑点が写っていない。= 結晶のセンタリングがずれている。
→ センタリングし直す。
-
・水のリングが強い、バックグランドが大きい。
= 霜が付着している。→ 冷却ガス吹付け口の位置を調整する、など。
= 溶媒が凍結している。→ 抗凍結剤の組成を再検討する。
ここまでの操作で、1)X線回折装置が実験を行う条件を満たしているか、2)作製した結晶で回折データの収集が可能か、を判断する。
1)については各装置の操作方法を理解していれば問題は無い。
2)が満たされない、つまり回折斑点が確認できない場合は、結晶を交換する必要がある。
結晶を交換しても良質な回折像が確認できない場合、結晶化条件から見直す必要も考えられる。
多少質が悪くとも回折斑点が確認できれば、次の「5. Assign Unit Cell」を行い、その結果と併せて判断する。
5. “Assign Unit Cell”
ここでは収集した回折画像を用いて結晶の格子定数を決定する。Flow bar のAssign Unit Cell をクリックすると、新たにサブパネル(Find Spots 等)が表示される。サブパネルの順番に解析を進める。
5.1 “Find Spots”
格子定数等を決定するための反射を画像データからピックアップする。
-
Scan Table:・・・: 通常、Initial Imageで撮影した「(サンプル名)_Screen????.img」を指定。
-
Sigma: 3〜5(通常は3)。
- Minimum Pixel Value: 通常、20.
- Peak Filter: 通常、6
- 2D/3D: 通常、3Dのチェックは外す。
-
Box
Width: 0
Height: 0
- Resolution(Å): 下記の「分解能について」参照。
以上確認の上、「Run」。
参考:分解能について
Assign Unit Cell以降の作業では、「Resolution(Å)」で測定に用いる分解能を設定する。
以下の操作でカメラ長から計算された分解能を設定することが出来る。
-
「Resolution(Å)」の「Set…」ボタンをクリック。
-
「Set Resolution」画面が開く。
*「Set Resolution」画面はツールバーからも開くことが出来る(取説ver1.3参照)。
-
「To Edge of Image」ボタンを押す。
*この操作で検出画面内円の範囲が測定される分解能となる。
-
「Apply to: 」は通常、全てチェック。
*ここでチェックした作業において、設定した分解能がdefault値として扱われる。
なお、分解能の設定はどの作業画面(の「Resolution(Å)」の「Set…」)でも行うことができる。
Minimun、Maxinum共に0を入力、あるいは「To Corner of Image」を選択すると検出画面外円、つまり画面全面が解析範囲となる。
しかし、それらの範囲で十分に反射が得られていなければ意味は無い(通常は「To Edge of Image」で十分)。
5.2 “Index Spots”
前操作でピックアップした反射に基づき、格子定数等を決定する。
“Advanced”タブのパラメーターはdefaultで可。
-
Space group: Unknown Spacegroup
(注) 仮に空間群が解っていても、「Unknown Spacegroup」を選択する。
-
Reflection lists: dtfind.ref
-
User chooses solution: チェック
(注) チェックしないと自動的に一つの格子が選択され、他の可能性を検討できない。
以上を確認の上、「Run」。
⇒ 「Index Results」画面が表示される(下記「Index Resultについて」参照)。
適切な解を選択し、「OK」。
参考:Index Resultについて
Index Spotsを実行すると、解析結果が「Index Result」として示され、複数の回答(格子の種類)が表示される。
その中から適当な格子を選択するが、以下の点に注目し判断する。
- Least Sq: 1以下の値をとる
- volume: 値が最小のもの(あるいは最小値に近いもの)。
- Spacegrp (Bravais): 対称性が高い空間群(ブラベ格子)のもの。
- Lattice: P(単純格子)
基本的には「Least Sq」 「volume」で判断する。複数の候補がある場合は「Spacegrp (Bravais)」に注目。「Lattice」は参考程度に止めたほうが無難。
Indexingが成功しているかどうかは「Refine Cell」と「Predict Spots」で確認できる。
多く場合、ここで選択される格子は、正確な格子と同じブラベ格子に属する対称性の低いものである場合が多い(例えば、リゾチーム(空間群P43 21 2)の場合、P4が選択される)。
最終的な格子の決定は画像データの収集が終了した後「Analyze Data」で行われる。
(注)
格子を決めかねた場合は、対象性の低い格子を選択して解析を進めることも可能である。しかし、その場合、後の格子の決定に影響を与える場合もあるので注意が必要。
5.3 “Refine Cell”
ここでは格子定数などの各パラメーターを精密化する。
重要なパラメーター
-
I/σ(I): 3〜10(通常は3)
-
Cycles: 各パラメーターが収束するのに十分な値(10,000程で十分)。
-
Rejection Limits
X: 1
Y: 1
Rot: 2
-
Macro: allを選択。
-
Reline on: Reflection list
-
Reflection list: dtfind.ref
以上を確認の上、「Run」。
格子が適切かどうかの判断は、実行後のStatistics及びReflectionsの値、さらに次のPredict Spotsと併せて行う(「ここまでの注意点及び改善点2」を参照)。
5.4 “Predict Spots”
“Advanced”タブのパラメーターはdefaultで可。
- Scan Table:・・・: 通常、「(サンプル名)_Screen????.img」を指定。
以上を確認の上、「Run」。
必ず角度の大きく異なった複数枚のイメージ(例えば0°と90°の回折画像)を確認する。
解析結果の判断は次の「ここまでの注意点及び改善点2」を参照。
ここまでの注意点及び改善点2
「5.3 Refine Cell」及び「5.4 Predict Spots」では以下の点がクリアされていれば問題ない。
Refine Cell
Refine Cellを実行後、以下の値なら結晶は良質、精密化(及びIndexing)に問題は無いと言える。
-
Statistics: RMS Residualsのmmが0.1〜0.2の範囲の値を、degreesは0.3〜0.4の範囲の値をとる。
-
Reflections: RejectedがTotalの値の10%以下の値をとる
*これらの値が非常に悪い場合、質の良い結晶に交換する以外、根本的な改善は見込めない。
多少悪くとも、回折斑点が綺麗に撮像されているなら、そのまま続行してみる。
Predict Spots
回折画面に示された計算上の反射の位置(青丸)と、実際の回折斑点がおおよそ合っていれば問題ない。
なお、実際の反射と計算上の反射が一致しない原因としては以下が考えられる。
-
Index Spotsで選択した格子が適切で無い。→Index Spotsをやり直す
*連続した回折斑点が一つ置きに飛ばされて選択(丸で囲まれる)されている場合、倍の格子定数を選択している。
全体的に一致していない場合は全く異なる格子を選択しているか、次に挙げることが原因と考えられる。
-
反射球の問題。→問題は無い。
*回折画像正中線上の回折斑点が選択されないことがあるが、結晶の質やIndexingとは関係がない。
-
結晶の質が悪い(モザイシティーが高い)。→結晶を交換する。
*結晶を交換する以外、改善は見込めない。
良質の結晶の場合モザイシティーは0.3〜0.4の値を示すが、1程度までならそのまま解析を進めるべき。
回折実験に用いる結晶の質は回折データの質に直接反映されるため、より良い結晶を探す努力は不可欠であり、
Index Spots〜Predict Spotsで良好な結果が得られない場合、結晶を交換し測定を繰り返す。
しかし、結晶が貴重な場合、多少結果が悪くとも解析を進め回折データを収集することは重要である(ここまでの基準が、最終的な回折データの質を評価するものでは無い)。
また、構造解析には不十分でも結晶系の情報を得られる可能性はある。
これまでの解析結果から、この後の回折データの収集に用いる結晶を決定するが、その判断基準(この結晶を使うか使わないか)は任意である。
結局、その結晶の質の良否、すなわち、その結晶から得られるデータの良否は、最終的なR-merge等を見て判断するしかない。
以上で、予備測定終了。
回折データの収集に利用可能な結晶との判断が付けば、次の「回折データの測定 / 6. “Strategy”」へ。
別の結晶に交換した場合、「1.2 Projectの設定」にもどり、新規Sampleとして再測定。