X線結晶解析> CrystalClear1.3> データ処理

回折データの処理

 回折データの処理は“ClystalClear ver.1.3.6 SP3”でも可能です。

8. “Integrate Reflections”

 収集した回折データから、積分反射強度を見積もる。
 *タンパク質結晶の場合、Mask Fileを作成する必要は特に無い。

“Main”タブ

“Advanced”タブ

以上、確認の上、「Run」。
 ⇒ 「You are not using a mask file. ・・・」との確認画面が表示。
マスクファイルを使用しない場合、「はい(Y)」。
*通常、タンパク質の解析ではマスクファイルは使用しなくとも問題無い。
 ⇒ 処理開始。

参考:Ice Ringについて

 回折画像の3.5Å付近に水(氷)の回折に依存したリングが生じることがある。
 「Ice Ring」の実行で、水のリングを取り除けるが、同時にその周辺の回折斑点も除去されてしまう。 結果、最終的な構造解析に問題が生じる可能性があるため、「Ice Ring」の実行は余程のことがない限り、避けるほうが無難。
 タンパク質由来の回折X線が十分検出できれば、大きな問題にはならない。 また、仮にリングが原因で回折斑点が棄却されたとしても、他のイメージで等価な反射が確認されることは十分ありうる。

 最も重要な点は、強い水のリングが生じる原因(大きな霜の付着等)を取り除くこと (吹付低温装置「参考:霜付きについて」参照)。
 霜付きがないにも関わらず強いリングが生じる場合は、抗凍結剤があっていない可能性があるので、その組成を見直す。

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9. “Analyze Data”

 ラウエ対称から、空間群の決定を行う。
 Flow bar の Analysis Data をクリックすると以下のサブパネルが開く。

9.1 “Laue”

 ラウエ対称を決定。

以上、確認の上、「Run」。
 ⇒ Laue Resultに解析結果が表示される。
PASSされた解のうち一番対称性が高いもの(回答の一番下)を選択し、「OK」。

9.2 “Centricity”

以上、確認の上、「Run」。
 ⇒ Centricity Resultが表示される。
acentricを選択し、「OK」。

9.3 “Spacegroup”

 空間群を決定する。

以上、確認の上、「Run」。
 ⇒ Spacegroup ResultsのSpacegroup Foundに推測される空間群が示される。
   下記「Spacegroup Foundについて」参照
結果を確認し「OK」。

参考:Spacegroup Foundについて

 Spacegroup Foundに一つの空間群が示されれば問題無いが、複数の回答が示される場合がある。

らせん軸の消滅則から判断できない場合
 空間群の種類によっては同じ消滅則を持つものがあり、その場合空間群を特定することは出来ない(例えば、P31・・・とP32・・・、P41・・・とP43・・・)。
 この場合は、両方の空間群で、別個に次のScale and Averageを行い、強度ファイルを作成し、 それぞれ空間群で構造解析を進める必要がある(正しい空間群は構造解析を通して決定する)。

回折データの量が十分で無い場合
 十分な角度領域の回折画像を収集できていない場合、空間群を決定することは出来ない。
 これを防ぐには、180°分の角度領域を測定し解析する。

 “CrystalClear ver.1.3.6 SP3”では“Space Group Results”として表示される。
 「参考:“Space Group Results”」も併せて確認のこと。

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10. “Scale and Average”

 構造解析に用いる強度ファイルを出力。

“Main”タブ
“Advanced”タブ

以上確認の上、「Run」。
 ⇒ 解析開始。
解析終了後、結果を示したファイルdtscaleaverage.logが表示される。
反射ファイル(ScalAveraged.ref=構造解析に用いるデータ)は、作業フォルダ内に保存されている。

 必要に応じてScale and Averageは繰り返し実行する(「参考:Spacegroup Foundについて」・「ここまでの注意点及び改善点4」参照)。

以上で、回折データの処理が終了。


ここまでの注意点及び改善点4

 dtscaleaverage.logで以下の点を確認する。

R-merge(「Rmerge vs. Resolution」のRmerge shell)
 累積の値を確認し、0.05(=5%)以下の値なら良質のデータ、0.1(=10%)以下なら問題なく解析を行える。
 0.2(=20%)以上の値をとるデータの信憑性は薄い。
 また、高角の測定領域の値も確認し、値が悪ければ(0.3以上)その測定領域を除く(「Resolution(Å)」を設定し直す)。

Completeness(「Completeness vs. Resolution」のCompleteness shell)
 R-merge同様、累積値、高角領域の値に着目。
 80%以上であれば十分な精度を持った構造解析が行える。値が悪い場合は、高角領域を切る等の処理が必要。

 上の作業で分解能を下げていくことになるが、条件を満たした分解能が、実際の反射データの分解能となる。
 タンパク質の構造解析には最低でも3Å以上の分解能が必要とされている(分子量にもよるが2Å分解能以上が普通)。

Rdued ChiSq(「Rmerge vs. Resolution」のRdued ChiSq)
 Rdued ChiSqの値を確認し、必要に応じてRdued ChiSq が1.0に近づく様に補正(Scale and Averageを再実行)する。
・0.90<Rdued ChiSq<1.90の場合
 1.0であるに越したことは無いが、特に補正の必要は無い。
・Rdued ChiSq<0.90の場合
 Error Model: Weigth Multiplier → Explicitを選択。1.0〜2.5の範囲の値を入力。
 Error Model: Weight Added → Auto-Rmergeを選択。
・1.90<Rdued ChiSqの場合
 Error Model: Weigth Multiplier → Explicitを選択。2.5〜4.0の範囲の値を入力。
 Error Model: Weight Added → Auto-Rmergeを選択。

 以上を確認後、再びScale and Averageを実行する(必要なら何度か繰り返す)。

(注)
 補正を行ってもRdued ChiSqの値が改善されない場合、データ(結晶)の質が良くないか、結晶系や格子等が間違っている可能性がある。
(注)
 Scale and Averageを繰り返す度に、ScalAveraged.ref、dtscaleaverage.logが作製される。
 ファイル名に番号が付いていないものが、最終的な処理したファイル、つまり構造解析に用いるファイルとなる。


 複数の空間群が解として得られている場合、最終的な空間群の決定は実際に構造解析を行って判断する。

 CrystalClearの操作、すなわち回折実験を通して最も大切なことは、質の良い結晶で十分な量(180°分以上)の回折画像を撮影することである。

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11. “CrystalClear”終了

メニューバー File → Exit。
 ⇒ 確認画面が表示。
「はい(Y)」
 ⇒ “CrystalClear”画面が閉じ、終了。



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